教室に落ちていた紙飛行機のおはなし

雑記
2019/08/21
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昔話です。ふと思い出したので。
技術ネタを追いかけることに疲れたら読んでください。


* * *


中学一年生の時のお話。

うちのクラスの担任は毎日のように学級通信を手書きで記し、わら半紙に印刷して配布していました。

当時20代後半の若い女性です。いま振り返ると、クラス運営に熱心な先生だったと言えるでしょう。

学級通信には文化祭などのイベントに向けた担任の意気込み、クラスの雰囲気に言及したり、生徒の良い行動や悪い行動に対する担任の考察…など。

学級通信には担任の思いが綴られていました。




わたしを含め、その学級通信には生徒の多くが批判的でした。

学級通信には自分たちの一挙手一投足についてとやかく書かれているのですから。


クラス担任は各教科担任に
「うちのクラスの授業態度どうでした?」と頻繁に聞いて回っていました。

どんなに良い子を集めたクラスにも、教卓から見て一人や二人ぐらいは授業態度のよくない生徒というのはいるものです。


そのことが翌朝配布される学級通信によってクラス全員に知らされます。




「クラス全員が授業に集中できない雰囲気を作り出していたに違いない。
教科担任への謝罪と、今後の対策について、クラス全員参加の学級会を開いて話し合いなさい。」




宿題の提出をしなかった生徒がいた場合も、同様に全員で学級会が開かれます。

部活や時間割の都合上、時間が作れなければ、朝早く集まって話し合いをしました。




わたしたち自身は、まだまだ未熟であることを自覚していました。

友人を傷つけるような不用意な発言もしたでしょうし、イラッとしたら言い合いにもなるはずでした。
しかし級友との価値観の違いなど、ほんの小さな差にしか感じられませんでした。

なんたって、共通して立ち向かうべき「敵」がいたのですから。



* * *



その日は実験があったため、理科室に移動していました。

よくある理科室用の机に6人ずつ座り、グループ内で相談しながら実験を進め、実験結果について先生が解説しています。

授業も終わりに近づいた頃、先生が何かを見つけ、拾い上げるや否や、怒鳴りはじめました。

普段は優しい紳士で、大きな声を出すのはサッカー部の指導をする時ぐらいでした。

先生から遠い位置だったため何が起きているのかしばらく状況がつかめずにいました。




「お前たちのクラスの学級通信を紙飛行機にしたものがいる、誰だ。
授業が終わる前に名乗り出なさい。名乗り出るまで今日の授業は進めない。」




今後同様に紙飛行機が飛ぶような授業になってはまずいです。ここで釘を刺すのは当然だと思います。

さらに同じ学年を担当している、まだ若い女性教師が夜遅くまで学校に残って、生徒たちのことを思って綴った学級通信です。

当の本人である生徒が粗末に扱ったというのは見過ごせないでしょう。




教室は静まりかえっていました。
少しでも動こうものなら犯人扱いされてもおかしくない雰囲気が流れていました。

この出来事が中3の通知表の成績に関わってくるかもしれないと考えると、先生に楯突くことなんてできませんでした。

しかしこのなんの生産性もない時間は、突然終わりを迎えました。



「先生、僕がやりました。
僕が学級通信を紙飛行機にして、飛ばしました。」



そう声を上げた男子は非常に真面目で、頭も良くて、紙飛行機を飛ばすような性格の人間ではないことはその場にいる誰もがわかっていました。

おまけに彼の座っている位置から紙飛行機を発見地点まで移動させるにはかなり無理がありました。

先生もさすがに違うとわかってはいたようで「本当に君がやったのか?そうは思えない。」と疑っていました。

少し前にチャイムが鳴っていたことから「あとで職員室にきなさい。」と先生が言って、授業は終わり。

道徳心のかけらもないわたしは、授業が進まなかったことに苛立ちました。




当然ですがこのことは担任にも連絡がいきました。
ただ担任がこの件に関して何を言っていたか忘れてしまいました。

犯人は僕だ、という人がいるのなら普通はそれ以上追及できないですからね。
真面目な男子は優秀な高校に進学していったようです。

成績に影響が出るなんてビビってたのが恥ずかしく思えます。




あとになって気づいたのですが、紙飛行機を落としたのは、やはり別の生徒でした。

先生たちにはわからなかったのか、もう追及しなかったのかは不明ですが、その子へのお咎めはなかったようです。




* * *


ふと思い出したので書きました。

私たちの中学は不思議なことを言う先生が多かったのですが、未だに許容できず忘れてしまったことが多いです。

今回の話はその三年間の中でも理不尽要素薄めで、マシなエピソードでした。


触らぬ神に祟りなし、余計なことには干渉しない、というのがわたしのモットーです。


しかしそうも言っていられず、そろそろ私たちは子供を育てる年齢に差し掛かってきました。

このまま気持ちに蓋をし続けるのはよくないと感じています。卒業したのに、どこか消化不良な毎日だと。

いまのうちに発散しておきたいですね。

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