調律師は優秀な相対音感持ち

楽器店で働いていた期間よりもプログラマとして働いている期間の方が長くなりました

以前調律師として働いていたことを話すと大抵聞かれることは限定されるんだけど、私の人見知りも相まって別に深い部分まで話すことも無く流れていく…

もっと質問してほしいとは全く思っていないんだけど、今まで定型文のように同じ説明ばかりを繰り返していて芸がないなぁと思っている

調律師の説明、というより私の話です

誰にも聞いてもらえないのでここにつらつらと書くことにします

Q.チョウリツシって何?


朝立師調律師はピアノのチューニングをする専門家です。

例えばギターは自分で6本のペグ(糸巻き)を回して弦の張り具合を調整して音の高低が変えられます

ピアノは外装部品を外すと調整できるようになりますが、何せ調整のためのチューニングピンは220本ほどあり、おまけに弦は70~80㎏の強さで引っ張られているので素人が調整するのは厳しいのです

(出典:Wikipedia)

そこで調律師が登場して1時間~2時間ほどで、演者にピアノが心地よく弾いてもらえる状態になるよう、音だけでなくタッチや響きまでも丁寧に調整していきます

Q.調律師は絶対音感持ちなの?


相対音感に優れた人間こそが優秀な調律師であると私は考えます 音叉を使って基準となる音を決めたらそこから88鍵を作っていくのです 絶対音感がないと調律できないと思っているなら誤解です

俗に言う「真ん中のド」の辺りには1鍵盤に対して3本の弦が張られています 前段階で基準となる1本の音を決めたら残りの2本を1/100Hzの狂いもなく全く同じ音に仕上げるのです

それとは関係なく私自身は絶対音感持ちです、ついでに共感覚持ちだと自称しています どちらも誰にもお墨付きをもらっていないので背中を丸めて細々と生きています

カラオケでの転調が大の苦手です、せいぜい原曲キーを思い出して指を折って数えるのが関の山です 1/100Hzの高低差は今でもわかるつもりなんだけど絶対音感に頼りすぎた気はします 相対音感には優れていないのかな……

Q.絶対音感持ちの世界ってどんな感じなの?


私自身は人間音叉型絶対音感持ちの落ちこぼれです、しかも養殖です うなぎだったら安値で売られてます

エアコンの音も電話の呼び出し音も12音のどれかに割り振られます セミはミとかファで鳴いているのをよく聞きます 黒鍵は苦手で割と正解率が低いです

隣合った鍵盤のどちらにもグルーピングできない音はただ気持ち悪いなぁ…とその良さを理解できないまま終わります 絶対って強そうなイメージなんですけど、相対と比較したときに絶対ってだけです。

つまり数多の音の中からドだけはわかる、ラだけはわかるという方も絶対音感持ちなのです しかし基本、日常生活において何の役にも立ちません。

英和辞典によるとPerfect pitchも絶対音感みたいですがこちらは完全音感を自称する方にお話を聞いてください

Q.なんで辞めたの?


  • 突発性難聴で仕事できなくなった
  • 基板が弄りたくなった
  • すぐには稼げない

大体そんなところです 好きなことをしながらゆっくりお金を貯めることができる人は続くと思います

調律だけではなく、営業・店頭業務・教室運営事務もやりました 働いてた期間が短いこともあり、圧倒的に調律以外の比率が大きかったです

既にピアノを持っている人は馴染みの調律師に任せているのに、今さら経験の浅い若い調律師に自分の大事なピアノを任せたくないですし 新規で生ピアノを買ってくれて、さらに調律を1年に1回頼むマメなお客様は今の時代なかなかいらっしゃらないです 習い事としてピアノ以外の選択肢がドンドン増えてきた中で、日本でピアノが飛ぶように売れていた50年前と変わらない方法では全く太刀打ちできないことは想像に難くないでしょう

そんな調律師も定期顧客を獲得してフリーランス(嘱託)になれば手取りは跳ね上がります プログラマはある意味スキルがつけばフリーでも喰っていくことが可能ですが、調律師は年に一度訪問できればいい方。お客さんがつくまでに時間がかかります。 調律師がフリーランスとして食べていくまでの下積みはプログラマが想像するよりもかなり長いのです

念の為に書いておきますが楽器店、延いては音楽業界を否定するつもりはありません この業界の技術屋は村の鍛冶屋なんです 音は見えない、しかし技術は見て盗め

ソースを見てスキルを盗む仕事と考えれば、プログラマにも共通するのかも?(笑)

Q.どうしてプログラマになった?


** ”業務を効率化するための革新なら快く歓迎してくれて 社員に還元できるだけの利益率が毎年確保できる業界だから”**

と言えば先を見据えてる感がありますが… 実際は、当時の部長と社長に合計2時間説教を喰らい 会社から飛び出しクズニートになった挙句 男と遊び呆けて咳と難聴を悪化させまくった20歳の私を母親が見かねて 近くにあったC言語とマイコンの扱いを教えてくれる場所にぶち込んだだけです

前提知識は皆無で、オマケに数学の偏差値は29の文系高卒女なんですが よくわかんないアルファベットの羅列をPCに叩き込んで、設定ボタンを何度か押したら、LEDが光ったり消えたりするんですよ‼ よくわかんない文字の意味は同期に教えてもらって なんとかここまで生きてます 特に配列の有用性がさっぱりわからなかった私に根気強く教えてくれた旦那には感謝であります


好きなことを仕事にできる人を尊敬します 小中の卒業文集に「将来の夢は調律師になること」と書いてしまっていることから、地元の友達には調律師を辞めたことを言いづらかったりします

C言語の勉強をしていようが当時クズニートしていたことは事実であり、それを話せば怪訝そうな顔をされることも珍しくありませんでした あまりに転職ペースが早いので最初から調律師になってないと認識してる子もいるはず

辞めたことをきっかけに特別ピアノや音楽が嫌いになったかというと、以前と全く変わりません 調律の仕事してる人や楽器店関連の人と話す時にはかなり気まずいぐらいです 前向きに捉えれば、挑戦してみたけど向いていなかった夢です

学費がパーになったというご意見は両親からのみ受け付けます 過去の話にも関わらず初めて会ったいろんな人に話題にしてもらえる以上、全て水の泡にはならなかったと思っています

もう部外者ではありますが、陰ながら音楽業界全体の労働環境が良くなることを願っています